ある多言語学習者の断想

ohne Fleiß kein Preis.

身体と言語:日独の慣用句・ことわざを巡って

日本語でもドイツ語でも、体の一部を使った慣用句やことわざがかなりの数あると分かります。そのいくつかを集めてみます。

 

3格 Sand in die Augen streuen 3格(人)のをごまかす、だます

直訳するなら「3格(人)のの中に砂をまく」。物理的にも凄く不快ですね。たまらないです。

 

3格 ein Dorn im Auge sein 3格(人)にとっての上のたんこぶだ

直訳するなら「目の中の棘である」。期せずして、目シリーズ、かつ痛々しいものが続いてしまいました。

 

3格 etwas ins Gesicht sagen 3格(人)にと向かって言いにくいことを言う

直訳するなら「に向かって言う」。この、面と向かって、というのが日本語の慣用表現だと改めて気づきます。言いにくいことを言葉で直接、改まった形で相手に伝える、というニュアンスを含んでいます。ドイツ語でもそれと同じ力がこの表現には宿っていると分かります。

 

ohne mit der Wimper zu zucken ひとつ動かさずに、平然と、ためらわずに

直訳するなら「まつげすらぴくりとも動かさずに」。目や目の周辺には感情や心情の機微が、無意識にでも出てしまうのでしょうね。だからそれと結びつく言語表現も多いのかもしれません。

ちなみに眉毛は「Augenbrauen*1」。

 

vor der Nase liegen 目の前にある。目との先だ。

直訳するなら「鼻の前にある」動詞はseinもあり得ると。

日本語だと「目と鼻の先」という表現がよく使われますが、ドイツ語では目はあえて言いません。日本人よりもドイツ人*2の鼻のほうが高く存在感があると推察します。そのせいもあって鼻だけでいい、と自分の中では緩い解釈をしておきます。

 

seine Finger überall drin haben 何にでも手を出す*3

直訳するなら「をあちこちに突っ込む」。日本語の「手を出す」というのもシチュエーションによって様々な意味があり、多義的ですね*4。多義的ゆえに慣用的というか。

 

auf den Ohren sitzen 何も聞いていない

直訳するなら「の上に座っている」。文学的な表現だなと。何だか、

  • 耳の上にちょこんと腰掛けて、
  • 膝から下の脚の部分をぶらぶらさせて、
  • 半目で、
  • ぼーっとしているような、

まさに何も聞いていないような、そんなヴィジョンを勝手に思い浮かべました。

 

keinen Finger krumm machen 縦の物を横にもしない。何もしない

直訳するなら「一本も曲げない」。ドイツ語の表現のほうが本当に何もしない感じがでてますね。

 

die Ohren spitzen をそば立てる、聞き耳を立てる 

直訳するなら「両耳をとがらす」。イメージはできます。*5

 

Hals über Kopf 大慌てで、あたふたと

直訳するなら「頭の上に首を置いて」。ホラーなのかコメディなのか。慌てすぎて普通じゃないことは確かです。

 

これらは参考書や辞書からの抜き書きに過ぎず、現実世界で自分が運用することが肝心だと思い至ります。

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*1:たいてい複数形

*2:ドイツ語圏の人々

*3:商売や趣味など

*4:たいていはそんなによろしくない意味で用いられます

*5:ことわざではないですが「耳がダンボになる」っていう表現もあります。これは死語ですかね? でも言いたくなってしまう