『まいにちドイツ語』を聴いて/「喜び」の分類 freuen
いつものように引用から始めます。
Ich freue mich, Minna!
「うれしいよ、ミンナ!*1」
再帰動詞が使われています。日本語話者にとっては馴染みのない概念なのでとっつきにくい印象を持ってしまいます。
Ich freue mich.
直訳すると、「私は私自身を喜ばせます」となります。喜んでいるのは自分。
freuen を巡って
いくつかの前置詞を使って、いわば喜びの元・原因について時間的な区分けされています。
- sich4 ūber 4格 freuen (過去・現在に関する事柄について)喜ぶ
- sich4 auf 4格 freuen (未来に関する事柄について)喜ぶ・楽しみにしている
- sich4 an 3格 freuen (目前・直前のことを)喜ぶ
ūberは、英語でいうとover「上方に、超えて」。ある事柄の上方を超えてきたようなイメージでとらえます。だから過去~現在について喜ぶ。
aufは、「上に」。ある事柄(楽しい予定)を何らかの土台の上に置いて、それを眺めているようなイメージ。だから未来について喜ぶ。即ち楽しみにしている、という日本語になる。
anは、「~に」。ある一点で接するイメージ。その1時点のことについて喜ぶ。
そう私の中では理解しました。あとは、読むなり、聴くなり、しゃべるなりして、肌感覚を養っていきたいです。
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*1:女性の名前
『日記を書いて身につけるドイツ語』という本を楽しむための営み
今日もお世話になっている本のことを書きます*1。
日記を書いて身につけるドイツ語
この本も2015年頃に購入しました。そして、今になって読み返すとまた色々な発見があります。以下、列記しましょう。
- 当時はドイツ語で日記をつけられる程の力を持っていなかった。そのため、自分にはちょっと難度の高い本だなと感じていた。
- 日記をつけたり、日記とまでは行かずとも手帳やtodo listを日々使っている自分としては遅かれ早かれ利用できそうだな、と感じている。その確信のもとに購入した。現状、可能なものについてはドイツ語でメモをすることにしている。さすがに日記までは困難だが。
- とにかく例文や例となるフレーズが豊富で実用的な内容。巻末には文法の解説も収載されている。
1.この本と自分の能力のギャップの話
これについて、自分のドイツ語力の向上によってこの本を活かすことができそうです。この本を楽しめるようになりたい。これが1つの学習モチベーションなのです。
2.手帳やtodo listにおいて、可能な範囲でドイツ語を使う話
これは少しずつやれている状況。
ウェブサービスの「todoist」をドイツ語の言語設定で利用しています*2。
日々少しずつでもドイツ語を使う。この習慣が自分をどれだけ変えるのか? アウトプットという観点では本当にカタコトレベルですが、これも継続してみます。
3.例文、例フレーズが豊富な本
このタイプの本は他にも沢山あると思います。その例文や例フレーズをそのまま使うことができれば、強力な武器になるでしょう。
確かに語学にはそういう側面は多分にあると見ています。決まり文句は決まり文句であり、そのまま頭に入れておけばいいと。
しかし、です。そのまま覚える、ということ、いわば丸暗記ができるか否かという問題があります。
脳の若さと丸暗記の相関性はよく議論されるところだと思うのですが*3、丸暗記の割合を軽減するのが、文法やその言語におけるシステムなのだと気づきます。文法に対して私自身が嫌悪感を抱かないからこんなことを言っているのかもしれませんが、根本的な土台を、あるいは、全体を覆い尽くす空を知ることのほうが効率的だな、とつくづく思うのです。
まとめると
- 言語学習において丸暗記は結構大変、でも必要で重要だね
- 文法やそのシステム面をマスターすれば、「丸」暗記の割合が減って効率的かもしれないね
ということです。
『素朴なぎもんからわかるドイツ文法』と疑問という名の冒険
今日は好きな本を取り上げましょう。2015年頃着手した記録があります*1。
ドイツ語にせよ、別の言語にせよ、何か新しい分野に接する時、人は何らかの疑問を抱きます。
- なぜこうなっているのか?
- なぜこのようなルールがあるのか?
- どのような仕組みで成立しているのか?
- どこまでが整理された仕組みで、どこからが仕組みや理論の無い領域なのか?
ドイツ語を学んでいて、「何でこうなるの?」と思うことはしばしばあります。日本語の言語システムとは違うのだから当然かもしれません。この疑問を一つひとつ解き明かすのが学習だとしたら、これはもはや冒険と言えるかもしれない。
接続法って結局何ですか? 概略をつかむ
文法書やドイツ語入門書の後半に突如現れるこの項目。また来たな! ってなります。この機にこれをまとめてみます。
まず直説法
Peter ist krank.
「ペーターは病気である」(事実)
まず対比のための例示。これは接続法ではなくて、フツーの文です。直説法と呼ぶ。事実そのものを述べています。話者つまりペーターでは無い誰かが、そう認識して言っている。
この状況を具に想像すると、「話者はペーターが青白い顔をして、病院のベッドで寝込んでいるその場に居合わせている」といったところでしょうか。
接続法1式
Peter sei krank
「ペーターが病気であると」(事実かどうかは関知せず)
これが接続法第1式。よく見ると、ピリオドが無い。つまり、文章はこれだけでは完結せず、「と」と接続する機能を持っている。だから接続法と呼ばれる、と本書には解説がありました。納得。人から聞いた話を伝えようとするような場合に使われる。
つまりこの状況においては「話者はペーターの今の状況をよく知らない。少なくとも直接会っているわけではない」ということだと見なせます。それ故に間接話法で用いられる。
接続法2式
Peter wäre krank
「ペーターが病気であると」(事実では無いが、つまり「ペーターは病気じゃないけどね」)
これが接続法第2式。これも上と同様に、ピリオドはありません。文は完結しておらず、接続していきます。事実ではないことを話者は知っていて、それでも事実でないことを述べる場合の表現ということになりますね。文学の香りがしてきます。
この場面を想像するに、「話者はペーターがバック転を何回もしている場面に居合わせており、健康そのものだと認識している。その上での発言」ということかなと。
例文
Die Freunde sagen, Peter habe viel Geld.
「(事実かは知らないが)ペーターがお金をたくさん持っていると、友人たちは言う」
これが接続法第1式による間接話法。このhabeの中に接続詞の「と」がすでに入っているのでdass *2は不要という解説にも納得。クエスト達成!
Wenn Peter viel Geld hätte, könnte er ein Auto kaufen.
「(事実ではないが)もしもペーターがお金をたくさん持っているとすれば、車が買えるだろうに」
これが接続法第2式による非現実話法。ペーターはたくさんのお金を持っていないから、車を買うことはできない、そのことの別の言い方。
非現実的な表現でもって、結果的に事実を強調的に言っているという気もします。
ここまで見てきて感じたこと
この「事実でないことをしっかり区別して述べる方法が、使用言語にすでにプログラミングされているドイツ語」。これを日々用いてものを考えているドイツ語話者。このことを踏まえると
- 事実と夢を、現実と想像を明瞭に区別する民族性を有しているのではないか
- 事実や現象を重んじる科学や技術の分野において、相対的に優れている理由の一つなのではないか
というゆるい仮説を立てている自分がいます。
ただし、このこともまた、別言語の概況を学ぶなり、調べるなりしないと立証されませんね。
『まいにちドイツ語』を聴いて/疑問と仮定の交差点
いつものように引用から入らせて頂きます。
今日は練習問題の箇所から引きます。*1
Geht man hier geradeaus, kommt man in fünf Minuten zum Bahnhof.
「ここをまっすぐ行けば、5分で駅に着きます」
これはつまり、仮定・条件を表す従属の接続詞 wenn の省略、がポイントです。省略せずに書くと、
- Wenn man hier geradeaus geht, kommt man in fünf Minuten zum Bahnhof.
こうなります。
ドイツ語において、文頭に動詞が来るのは、
- 疑問文
であることが多いのですが、それならば疑問符*2で終わるはず。そうではなく、カンマが打たれ、その直後に動詞が来る今回のような場合もある。
憶測で書きますが
- 動詞はじまりの疑問文
- wenn が略されることにより、動詞ではじまる仮定/条件の表現
どちらも断定するような普通の文*3ではないことを意味します。
疑問文というのは事実であるか否かを相手に*4問うという観点で、事実の前段階の何か、未確認の事実を意味します。
仮定/条件表現も、文字通り「もしも」や「だとすると」という語を伴い、事実ではない仮想的な何かを持ち出すことになります。
このような理路で、上記2表現は構造的に似た形をとっている、と私の中で結論づけておきます。私の中でね。
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『まいにちドイツ語』(応用編)を聴いて/萩-津和野
今日と明日、木金は応用編。引用します。
Die Keramik aus Hagi ist zwar sehr schlicht, aber auch sehr elegant.
「萩の陶器は確かにとても地味だけれど、でも大変上品である」
- zwar A, aber B 「確かにAではあるが、しかしB」
相関的接続詞と呼ばれている。「こう来たら、こう」という呼応がある。読解や聴き取りにおいて、ある程度の予測が可能で役に立つ、とのこと。なるほどね。
日本語でもそうですが
- 肯定
- 否定
- 対立
- 順接
- 逆接
- 共存
- 並列
- 補足
そういった文脈のうねりや構造をそれぞれのテキストは持っていて、その指標となる接続詞なり、表現については特に注意をしたいところ。
その昔、現代文の先生が「極端に言うと“しかし”の後だけ読めば*1理解できるよ」みたいなことを仰っていたのを思い出します。改めて考えてみてその通りかもな、と。
A しかし B という構造
A、Bの箇所にはそれぞれ何が来るか?
論説文において、大抵Aでは既存の情報、既知の情報が提供される。著者の見立てが示される。ある事柄があり、そのように一般的には見なされているが「しかし」著者の主張はBである、という構造を多くは有している。
そもそものところでなぜテキストは書かれるのか?
それは著者に「言いたいこと」があるからだと言えます。当然かもしれません。
- 新たな見解を世に届けたい
- 従来の主張や通念を覆す論を展開したい
そういう動因があるから書く、と。言いたいこと「B」を説明するために「A」という現状や常識や通念、通説を書き並べる。「私が言いたいBは、Aとは違うのですよ」と説明する。
文章の論理構造
- 母国語である日本語
- 義務教育でもある英語
- 今取り組んでいるドイツ語
この三ヶ国語にしか携わっていない狭小な観測範囲で申しています。
上記のような一般構造を逸脱する傾向にある言語、こういった構成を持つことのない言語があるのかもしれないな、とロマンに浸りつつ筆を置きます。
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*1:論説的文章は
『まいにちドイツ語』を聴いて/すべき・したほうがいいんじゃないかな
今日も引用させて頂きます。
Sie sollten besser heute hier übernachten.
「きょうはここにお泊まりになるのがいいんじゃないですか」
控えめに相手に意見する表現。文法的には接続法2式。「〜したほうがいいのではないでしょうか …」
sollen「〜すべきだ」という表現は強い。強すぎる*1。会話にて、ましてや、du ではなくSie で話す間柄なら尚更のこと、sollenではなく、solltenが活躍しそう。
教材と準備の話題
さて、話題は変わりまして。下の書籍を引っ張りだしてきて少しずつやっています。とりあえずは冬の独検準1級に挑戦するつもりなのでやれる「準備」はやりたいところです。
この準備という言葉を、よくワールドカップ日本代表の選手が口にしていたように思います。ある目標地点があり、それに向けて
- 練習したり
- 心を整えたり
- 技を磨いたり
- 身体の活動ピークを合わせたり
といった一連の営為の総称が「準備」なのかなと見ています。「頑張る」「努力する」という曖昧な言葉をつい使ってその気になるだけで、実行の手数も根気も弱めな私としては修正していきたいところです*2。
然るべき結果を求めるのなら、より具体的に動くほうがうまくいきそうです。
↑2009年発売日…
これだけでは「準備」として足りないだろうなあ。
↓トーマス・マン、表示されましたね!
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『まいにちドイツ語』を聴いて/提案とは何か?
今日も引用をさせていただきます。
Ich hätte einen Vorschlag.
「1つ、提案があるのですが」
この「ですが」のニュアンス。接続法2式による、控えめな表現。
- Ich habe einen Vorschlag.
とすると、ノーマルで直接的な表現になる。言い切ってしまう。
提案とは?
このder Vorschlag について分解してみましょう。
- vor 前に、前もって、模範
- Schlag 打撃、一撃、叩くこと*1
これで「提案」になる。日本語で「叩き台」と言ったりしますね。それに似た印象を持ちます。
ちなみに〜schlag 系の他の語は?
- der Gegenschlag 反撃、逆襲
- der Abschlag 分割払い、割引、ゴールキック
- der Blitzschlag 落雷
- der Tiefschlag 不幸な出来事、(ボクシングのローブロー)
日本語の漢字における熟語の発想に近い気がしませんか? 語と語を繋げていく構造的に。
もう一箇所、抜粋します。
Das wären große Umstände.
「お手数をおかけすることになってしまうので」
慣用表現とのこと。ここでも接続法2式が使われています。
*1:英語ならhitやbeatに相当しそう